精神科医益田裕介の考察ブログ

早稲田メンタルクリニック院長のブログです。https://wasedamental.com

世界観及び治療について

今日は早稲田メンタルクリニックの院長の益田裕介です

今日は僕がどういう風に人間及び社会世界を眺めているのかについて語ろうと思います



【前提となる世界観、理論】

 

まず僕が信じている世界観について説明します

世界観は、大きく2つの概念に立脚します。

一つは構造主義という概念です

もう一つは自由意志の不在という概念です

 

とても難しく聞こえるかもしれませんが、説明していくので、よろしくお願いします。

 

構造主義というのは、ある出来事を理解するのに、それ自体に求めるのではなく、それらを関係づける社会的文化的システムから理解する、そういう思想を指します。

なんだかこう言うと難しいんですが、簡単に言ってしまえば、日本人は日本人らしい価値観を持ち、日本人らしく振舞うし、アメリカ人はアメリカ人らしい価値観を持ち、アメリカ人らしく振る舞うということです。ものの考え方感じ方も、それぞれの文化によって決められてしまうという概念です。いやいやそんなことないよという人もいるかもしれません。細かく見ていけばもちろん違うところも沢山あるのですが、でも多くの日本人はお味噌汁やご飯が好きだし、それほど多くもないアメリカ人がお味噌汁やご飯を好むと思います。たかが食事の一つの意思決定ですが、同じようなことが様々な面でも見られます。

僕は昔自衛隊にいましたが、自衛隊にいる間は、やはり自衛官らしい価値観を持ち、国政に興味を持ったり、外交に興味を持ったり、他人の階級なのに嫉妬したりしていました。自衛官にいない人にとっては、どうしてそこが気になるの、と思われることにも、大変興味がありましたし、 固執してました。

人は属する文化や組織によって、ものの考え方や見え方が変わってしまいます。これを構造と呼びます。

人は生まれた時、何も分からず、母親だけが頼りで、母親に同一化するように彼女から物の見方を学びます。そのせいで両親の影響は計り知れず、彼らを疑うことをしません。ひどい話になるかもしれませんが、虐待を受けている子供たちでさえ、彼らは両親を愛するのです。この縛りつけられているものも、構造です。

構造は世界に意味を与え、僕らを混乱から救いますが、同時に縛りつけるものでもあります。

大きいもの小さいもの、様々な水準で構造は存在し、僕らはその構造を通して世界を見ています。世界を見ると言うと分かりにくいかもしれませんね。構造通して相手の気持ちを理解していえます。メガネをかけ帰るように、いくつもの構造を使い分けたりしています。一つの構造に固執してしまえば、盲点を生んでしまったり、合理的な行動取れなくなってしまうこともあります。

 

自由意志の不在というのは、構造主義にもちょっと関係があるかもしれません。

人は生い立ちや、これまでそして今の環境、本人の能力気質遺伝子などによって、ほとんど行動が定められてしまいます。自ら決定しているようで、誰かに操作されているかのような、そういうものです。

お酒を飲むという行為も、自ら選択しているようで、広告宣伝やアルコールがもつ依存性、周囲から学んだ習慣文化、などの影響からなんとなく選択していることも多いと思います。仕事が終わったらビール、これも自分で決めたことではなく、知らず知らずのうちに身についてしまったのではないでしょうか。 

診療していて、本人の甘えで鬱になった人はあまり見たことがありません。元々の能力や、養育環境、職場環境などで、なるべくしてなった人ばかりです。

どこに自由意志があるのでしょう?

古今東西、様々な思想家が自由意志を否定してきましたが、僕ら医療従事者も、そのように考え、患者さんと接してることが多いように思います。

 

これら二つの概念は、初めて聴く人にはとても難しく感じるかもしれません。

僕も様々な文献を読みながら、そして自分の経験と照らし合わせつつ、この概念を理解してきたと思います。

これら二つの概念を補足する、様々な理論がありますが、これらはおいおい説明していこうと思います。



【現在の社会、悩みの原因】

 

現在の社会は、一億総中流といった大衆社会から、多様な生活スタイルを持つ人たちの集団に変化していくところです。多様な生活スタイルを持つようになった理由として、インターネット it などの技術革新、少子高齢化による働き手不足、女性の社会進出が挙げられると思います。多様な生活スタイルの普及に伴い、多様な価値観を持つ人が生まれました。

僕は現代社会をこのように捉えています。

 

こうした世の中の変化に、対応できず混乱をしている人たちがいます。彼らが患者さんになりうる人です。

発達障害の人は、多様な価値観を持つことに対応する事は苦手です。

新社会人の人も、自らの価値観を組み立てていくのに、真似るべき人がなかなか見つからないので、とても困惑してしまいます。

 

価値観とは構造のことでもあります。

これほど情報がありながら、 自分にとって都合のいい価値観・構造を見つけることが、これほど困難な時代もないでしょう。

情報は資本主義と絡み、人々の欲望を刺激し、増殖していきます。資本主義は新しく、消費されやすいものを好むので、これまでの大きな構造・物語は破壊され、代わりに小さな構造物語だけが普及されます。しかしそれらは長続きせず、人々新しいものをお探しならないといけない。

世代間ギャップも大きく、真似るべき人が見つからない 

 

やりたいことが見つからない、どうしたらいいかわからない、生きていても仕方がない、将来が不安だ、自分に自信が持てない、生きている価値がわからない

 

これらの悩みの原因は、自分を規定する構造が見つからないからだと思います。もしくは自分に合わない、構造を身につけようとすることで、消耗しているからだと思います。ヤドカリが自分に合わない貝を背負ってるようなものです。

僕自身もどうすればいいかわからずに過ごしてきたように思います。

将来が分からないから、医師免許を目指しましたし、より強い文脈で自分を規定したかったから、軍隊に入り、その文化に洗脳されたいと思いましたし、辞めた後は精神分析の文化に洗脳されたいと思いました。

医療は仁術だと自分に言い聞かせることで、たくさんのチャンスを棒に振り、我慢してきたような気もします。

クリニックを経営し、 様々な人と会話をし、様々な価値観に触れる中、自分自身がいかに狭い世界に生きていたかを知りました。そして彼らもまた、自分と同じような悩みを持っているのではないかと考えるようになったのです。

 

【答え、解決編】

ではどうすればいいのでしょう。

まず重要なことは、等身大の自分を愛するということです。もはや生活スタイルがこれまでこれほどまで多様化してしまったせいで、人と同じように振る舞うことは困難です。憧れの人を真似ようとしても、初期条件の違いや現在の自分の立場があまりに違うせいで、努力すべき方向も違ってしまいます。なので、まず自分を受け入れることが重要です。

 

次に、複数のアイデンティティー・構造を持つことが重要です。

社会変化は大きく、多様な社会になる中、他者を理解したり、自ら有利な生存戦略をとるためには複数のアイデンティティーを持つことが重要です。

そして、そのひとつひとつのアイデンティティーに手ごたえのある人間関係をつくる必要があります。

 

人間関係をつくり、維持することは疲れます。

モラルに関するアイデンティティは、人間関係に拠らず、人に幸福感を与えることがしられています。知らない人に親切をし、されることでも、ひとは幸せになれるのです。

なので、モラルを磨き、それを誇りに思うことが重要です。