精神科の治療では、ゆっくりと良くなる場面と、上下の波を繰り返しながら、全体としては上向きに進んでいる場面、そして一つ階段を登るように突然良くなる場面とがあります。
突然良くなる場面、まるで人が変わったかのように、苦悩を達観する場面があり、私も治療者として立ち会うのですが、ただただ圧倒されるというか、感動させられるというか、人間という存在の奇妙な偉大さをおもいしらされます。
でも、それがどうして起こるのか?
それを説明することは難しく、おそらく理解することも困難です。
古今東西あらゆる理論によって説明を試みても、その場面と体験を照らし合わせた際、どこか単なる記述に止まるよう感じます。一方で、記述の担い手の体験や苦悩も垣間見るのですが。
このような場面に、どれぐらい立ち会えたかによって、治療者の臨床感覚というのは変わってくるのではないかと思います。