早稲田メンタルクリニック院長ブログ

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不眠症の治療について【2020年7月21日最新版】

2020年7月6日に、新しい睡眠薬としてレンボレキサント(商品名デエビゴ)が発売されました。

レンボレキサントはオレキシン受容体拮抗薬で、スボレキサント(商品名ベルソムラ)の仲間です。スボレキサントよりも作用時間が短く、入眠もスムーズなのが特徴です。

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬に比べ、依存性が少ないのも特徴です。

新薬なので2週間処方しかできないこと、ジェネリックがないので値段が高いことがデメリットとして挙げられます。

良い機会なので、改めて不眠症の治療について説明したいと思います。

 

○背景

5人に1人の方が睡眠について、何かしらの問題を感じています。
20人に一人の人が睡眠薬を服用しています。

 

○睡眠で困ったら

睡眠薬を服用する前に、以下のことを試してみましょう。

・寝る時間、起床時間を固定にする。
・睡眠時間にこだわらない。6時間ぐらいを目安にする。
・太陽の光をあびる
・適度な運動を心がける
・ストレスを溜めない、ストレス解消法を身に着ける
・寝酒をやめる。アルコールには睡眠の質を低下させる以外にも、疲れやすくさせたり、落ち込みやすくさせる作用があります。
・カフェインを減らす、寝る前に飲まない(寝る4~5時間前には飲まない)
・これらを実行し、習慣化させるために睡眠日誌をつけてみる。katsudo-kiroku_1week
早すぎる時間に寝ようとしていないか?
昼寝は長すぎないか?(20分を目安に)

○それでもダメなら、睡眠薬を試してみよう

治療の流れは、睡眠薬を使いながら、生活リズムを整え、ストレス対策を身に着けていくことです。
生活が落ち着いたところで、睡眠薬を減らしていきます。

数か月の通院で落ち着く人がほとんどですが、長く睡眠薬を使用される方もいます。

睡眠薬

主にベンゾジアゼピン系の薬物を指し、リラックス作用・睡眠作用があります。効果はお酒に少し似ていて、依存性がある点もお酒に似ています(が、お酒ほどはありません)。
新薬系は依存性が少なく、自然な眠りが特徴です。ジェネリックがないため、値段10倍ぐらいします(それでも1錠100円程度、保険がきくので30円ほど)。効果も弱い?印象があります。

  眠剤(3hぐらい) 一晩(6hぐらい)
ベンゾジアゼピン

トリアゾラムハルシオン

ブロチゾラムレンドルミン

フルニトラゼパムサイレースロヒプノール

ニトラゼパムベンザリン

エスタゾラムユーロジン

ベンゾジアゼピン

ゾルピデムマイスリー

ゾピクロン(アモバン

エスゾピクロン(ルネスタ

 
新薬系

ラメルテオン(ロゼレム):メラトニン受容体作動薬

レンボレキサント(デエビゴ)NEW2週間処方:オレキシン受容体拮抗薬

スボレキサント(ベルソムラ):オレキシン受容体拮抗薬
その他(漢方や薬の副作用応用)

抑肝散

アンセリンテトラミド)、トラゾドン、ミルタザピン:抗うつ薬の副作用利用

クエチアピン:抗精神病薬の副作用利用

ベンゾジアゼピン睡眠薬:脳内物質であるGABA受容体に作用。不安緊張をとる作用がある一方、依存性に注意
ベンゾジアゼピン睡眠薬:BABA受容体に作用するのは同じだが、不安緊張をとる作用が少ないため、依存性が抑えられている
メラトニン受容体作動薬:メラトニン受容体に作用することで、体内時計を調節し、自然な眠気をうむ
オレキシン受容体拮抗薬:目を覚ます作用のあるオレキシンの作用を抑え、眠気をうむ

 

睡眠薬の使い方

まず、短時間型の睡眠薬をお試しください。寝ている途中で効果が切れますが、起きることなく、朝まで眠られる方がほとんどです。

短いタイプの睡眠薬を試してみて、途中で何度も起きてしまう方は長いタイプのものを試します。
長いタイプのものは、朝に薬の作用が残ってしまう方(ぼんやりしてしまう)もいます。その場合は短いタイプのものに戻すこともあります。

 

○他の病気が隠れていないか(鑑別疾患)

眠れなくなる人で、うつ病躁うつ病統合失調症発達障害…などの病気を持っている可能性があります。
初診だけで診断が決定されるわけではなく、通院しながら、診断鑑別を続けていきます。
気軽にご相談ください。

よくある質問

睡眠薬依存になりませんか?

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には依存性が少しあります。しかし、お酒やたばこ、違法薬物のような依存性はありません。医師の指示に従って、正しく服用していれば安全な薬です。
多くの人は睡眠薬を必要としなくなり、通院を終了されています。

・薬が効かなくなりませんか?

耐性も少しつきます。初めてお酒を飲んだ時、コップ一杯で酔っ払っていた人が、中年になり、ジョッキ3杯ぐらい飲むようになるのと同じで、薬の効きも悪くなります。しかし、多くの人が大酒飲みにならず、ジョッキ3杯以上は飲まなくなるように、睡眠薬についてもそこまで強くなりません。決められた量を守っていれば、睡眠薬は適量でおさまります。

・通院はどれぐらいしないといけませんか?

最初は1~2週間に1回通ってください。自分に合う薬が見つかったら、最大1か月分処方することができます。

・毎日飲まないとダメですか?

睡眠薬は飲んだ時に効きます。毎日飲む必要はなく、眠れない時に飲んでください。

・副作用はどういうものがありますか?

日中に眠気が残ってしまう人がいます。
また、まれに「離脱症状」と呼ばれるもので、動悸がしたり、汗が出たり、手足がしびれる人などもいます。これについては、基本的に、時間がたつことで改善します。
睡眠薬を飲んでから、スマホをいじっていたり、家族と会話をしたり、皿洗いなどの家事をしていると、記憶がない状態で、奇異な行動(酔っ払ったときのような行動)をしてしまうことがあります。転んで骨折してしまう人もいるので、薬を飲んだら速やかに床についてください。

長く飲み続けていると、認知症のリスクが上がると言われることもありますが、それを否定する論文も多数でており、結論は出ていません。

【参考】
厚生労働省e-ヘルスネット(2019/10/30)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html